「ゆとり教育」の現状

 

お父さん、お母さんの中にも心配されている方が多いと思いますが、以前に比べて子供たちの学習意欲、行動意欲が減退しています。それは、ここ30年続いている教育行政と無関係ではありません。

 

ここ数年、教育行政のキーワードは「ゆとり」です。今の子供たちは塾通いと部活とで忙しすぎるのだそうです。そのことについても反論があるのですが、それは置くとして、「ゆとり」を実現するために、2002年度より学校の完全週五日制の実施と30%もの大幅な学習内容の削減が決定されています。この学習内容の大幅削減が大きな問題となっています。

 

実は学習内容の削減は今に始まったことではなく、1970年代から行われ、当時と比べると現在でも既に約三〇%も削減されています。その例を英語で示してみましょう。

 

中学英語    文型        1969年  37文型   1989年  22文型

            新出単語              1100語             1000語

            必修単語                610語                507語

            文法事項               21項目                11項目

 

理科と数学はもっと顕著で、教科書に登場する化学反応式は53から12へと5分の1に、数学では「集合」も「連立不等式」も消えてなくなりました。

 

こんなデータもあります。先進国の中学一年生が受講する学校での数学授業時間数の比較です。

 

アメリカ    146時間

カナダ    140時間

フランス   129時間

イギリス  117時間

日本          99時間

 

念のためにもう一度言いますが、これは現在の数字で、2002年度からは完全週5日制になり、学習内容は更に30%削減されます。

 

この「ゆとりの教育」が何をもたらしてきたか。

1998年に全米科学財団が発表した「国民の科学テスト」の国別平均点があります。

 

アメリカ    55点

イギリス    53点

フランス    52点

ドイツ      51点

イタリア    47点

カナダ      46点

日本        36点

 

かつての日本は、理数学力が世界のトップクラスと言われていました。ところが現在では、先進諸国の中でダントツの最下位なのです。文部科学省は「学力の低下は見られない」と打ち消していますが、理工系大学の教育現場では専門課程の指導ができず、高校内容の物理や数学の補習をしているところが少なくありません。また、大学生にもなって分数の足し算ができない学生がいるという「笑い話」のような噂は真実です。

 

人材以外に資源を持たない日本は、明治以降(実際にはそれ以前から)一貫して教育に力を注ぎ、科学技術立国として現在の繁栄を築いてきました。今、その根底がガラガラと音を立てて崩れようとしています。2002年度の大幅改訂は日本の教育にとどめを刺す危険性があります。

 

諸外国を見ても、学力の意味を「生きる力」に求め、「生きる力」を高めるために「ゆとり」を推進している国などは皆無です。

 

これほどの犠牲を払いながら、なぜ「ゆとりの教育」を推し進めてきたのでしょうか。それは、次々に起こる教育現場での事件のたびに、その原因として「学歴社会の弊害」と「知育偏重教育の弊害」が言われ続けてきたからです。